森見登美彦 / 太陽の塔読了。途中までずっと「どこらへんがファンタジーなんだ、これは」と思って読んでた。ちょっとだけファンタジーになったりもした。読みやすい。語彙は豊富。文体や喩えは面白いときもある。ただ、内容はどうでもよかった。舞台である京都に住んでたことがあるので、知ってる景色が描かれていたりするのは少し面白い。

 飾磨、かく語りき。
「ここに緑の牧場があると思ってくれ。ぐるりと柵で囲った中にたくさんの羊がいる。何も考えずにのうのうと草を食べてはごろごろして、それで結構幸せなやつもいる。俺は本当に羊なのだろうか羊ではないのではないか羊ではない自分とは何者なのかと不安になって呆然としているやつもいる。柵の外へちょっと足を出して、また戻って来ては、『俺さあ、実は外へ出たことがあるんだぜ』と得意になって吹聴しているやつもいる。それを感心して聞いてるやつらもいる。柵の外へ出たまま、どこかへ行ってしまったやつもいる。そのたくさんの羊たちの中に、一人でぽつんと立っているやつがいる。そいつは自分が羊であることが分かってるし、じつは恐がりだから柵の外へ出ようとは思わないし、かといって自分が幸せだとも思ってない。ぱっと見るだけなら、そいつは他の羊とあまり変わらないように見えるだろう。でもよく観察してみると、そいつはひたすら黙々と、すごく凝った形のうんこをしているのだ。確かにそれはただのうんこだ。でもひどく凝った形だ。とは言え、やっぱりただのうんこだ。そして、その羊が、俺だ」
p78-79

たぶん僕は「何も考えずにのうのうと草を食べてはごろごろして、それで結構幸せな」羊だから、共感できなかったのかな、と思った。